交通事故1

交通事故では、相手や相手の保険会社との示談交渉が上手くいかない場合が多々あります。金額で折り合えない場合はまだ良い方で、そもそもお互いの主張する事故状況が正反対で、双方が自分こそが被害者と主張しているような場合もあり、解決の糸口すら見つからないことがあります。

交通事故の民事紛争を法律的に解決する方法と、どこに相談するべきなのかを検討してみたいと思います。

自分で示談交渉をして解決するメリット・デメリット

交通事故の紛争解決のもっとも基本的なやり方は「自分で示談交渉をする」ことです。自分で示談交渉することのメリットは、自分だけの決断で迅速な解決が可能になることや、費用がかからないことです。デメリットは、自分に専門知識や交渉力が無いと交渉が不利になる点です。

自分で示談交渉をする場合、事故の相手方と直接交渉することもありますが、多くの場合は相手の加入している任意保険会社の担当者と交渉することになります。保険会社の担当者は、交通事故の損害賠償についての交渉の専門知識や実務経験があります。

一般の人が自分で交渉しても、交渉を有利に進めることは難しいでしょう。交通事故の損害賠償額の算出には、主に3つの算出基準が用いられています。具体的には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」と呼ばれるものです。

このうち自賠責基準で計算すると、損害賠償額は最も安くなります。自賠責保険は、交通事故の被害者に最低限の保障をするために作られた仕組みだからです。任意保険基準というのは、各任意保険会社が作成している独自の基準です。

任意保険基準は、自賠責基準を下回ることはありませんが、弁護士基準より低額です。弁護士基準は、裁判基準とか赤い本基準とも呼ばれているものです。弁護士基準は、過去の裁判で認められた損害賠償額をもとにして作られた算出基準で、弁護士が依頼を受けた場合に使用するものです。

この基準は、裁判をした場合に得られる限度の額ですから、自賠責基準や任意保険基準よりも高額です。当事者が自分で交渉する場合は、相手の任意保険会社は、任意保険基準以上の支払いを提案してくることはないので、弁護士基準での示談はできません。

このため、自分で示談交渉をして解決する場合、示談の金額は、弁護士などに依頼した場合より低額になります。

ADR(裁判外紛争解決手続)を利用して解決する方法

交通事故の紛争解決の相談先の一つに、ADR(裁判外紛争解決手続)機関があります。自分で示談交渉をしてもまとまらない場合は、ADRを利用することが考えられます。代表的なADR機関としては、「公益財団法人日弁連交通事故相談センター」や「公益財団法人交通事故紛争処理センター」があります。

こうしたADR機関を利用すると、担当弁護士が双方の主張や意見を調整して示談を斡旋してくれますので、弁護士基準に準ずるような金額での和解を目指すことができます。また、上記した2つの機関は、示談の斡旋を依頼しても実費以外の費用はかかりません。

ADRのデメリットとしては、利用できるケースが限定されていることです。ADR機関によって違いますが、物損のみの事故は扱っていなかったり、自転車事故は扱っていなかったり、事実関係に争いがある場合は利用できなかったりといった制限があり、必ず利用できるとは限りません。

また、弁護士が担当するといっても、自分の代理人弁護士ではなく、あくまで調整役ですので、自分の納得がいくような解決案が提示されるとは限りません。

また、示談がまとまるかどうかは結局のところ双方の合意によりますので、事故状況などの基本的な前提に争いがある場合は、時間の無駄に終わる可能性が高くなります。例えば、信号のある交差点での事故で、双方が「自分の方が青だった」と主張して譲らないような場合は、一方が多少の譲歩をしても、和解は成立しないでしょう。

弁護士に示談交渉を依頼して解決する

交通事故の紛争の相談先として最も有力なのは、弁護士です。弁護士に相談した上で、示談交渉を依頼すれば、代理人として示談交渉を行ってもらうことができます。弁護士は、弁護士基準で損害賠償額を算定して相手方に請求してくれますので、相手の保険会社が提示する損害賠償額よりも、賠償金が増額されることが期待できます。

弁護士は、ADRのような当事者双方の利害調整のための機関と違い、依頼者の代理人として、損害賠償額を最大化するための活動をしてくれます。また、裁判外での示談交渉がまとまらない場合は、そのまま調停や訴訟の手続を行ってくれますので、最終的な紛争解決を図ることができます。

弁護士に依頼するデメリットとしては、報酬等の費用が必要になることです。自分が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合は、同特約を利用すれば一般的に300万円まで弁護士費用を支払ってくれますので、多くの場合は弁護士費用を気にせずに依頼することができます。

しかし、自分が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いていない場合は、弁護士費用は自分の持ち出しになってしまいます。

調停により解決する

裁判所を利用した手続きとしては、訴訟の前に、調停を申立てる方法があります。調停のメリットとしては、訴訟よりも柔軟性のある解決が図りやすいことや、調停の申立てには時効を止める効果があること、調停委員会が双方の主張を交互に聴いて事案に応じた解決を図ってくれることがあります。

調停のデメリットとしては、調停をまとめるには、それなりの妥協が必要になることです。調停がまとまるかどうかは、結局のところ双方の合意によりますので、事故状況などの基本的な前提に争いがある場合は、時間の無駄に終わるかもしれません。

調停では、双方が「自分のほうが青信号で、相手は赤信号だった」と真逆の主張をしているような場合、調停委員会から、水掛け論だし50対50で和解してはどうかというような解決案を示されることすら考えられます。調停は、自分で申立てすることもできますし、弁護士に依頼して申立てをしてもらうこともできます。

弁護士に依頼した場合も、弁護士に任せきりということはできず、一般的には、調停の場に本人も出席します。

訴訟により解決する

当事者による示談交渉、ADRの利用、弁護士による示談交渉、調停などによっても解決を図ることができないようなケースでは、裁判所に訴訟を提起するしかありません。訴訟のメリットは、勝訴すれば示談金額が高額になることです。

また、勝つにせよ負けるにせよ、紛争の最終的な解決が図れてスッキリする点もメリットです。事故状況についての主張が真っ向から対立しているような場合、示談交渉やADRや調停などはあまり意味がありませんが、裁判は、必ずどちらかに白黒をつける判断を裁判所がしてくれます。

訴訟のデメリットとしては、解決までに長い時間がかかることがあります。また、訴訟を本人が自分一人で行うのは難しいので、一般的に弁護士が必要になり、その費用がかかることです。さらに、裁判では、こちらから様々な証拠を提出して相手に損害賠償義務があることを立証しなければなりません。

何の証拠も出せなければ、裁判所は相手の損害賠償義務を認めてくれませんし、負けてしまいます。仮に真実が自分の側にあっても、裁判で立証できなければ意味がありません。このため、訴訟を提起する前に、自分がどのような証拠を提出できるかを検討し、本当に訴訟を提起すべきか、大幅に譲歩しても訴訟外で和解しておくべきかという判断をすることが大切です。