交通事故32

交通事故でケガを負ったり、車などに損害がでた場合には、自賠責や任意保険などの制度で治療費や損害費用を賄うことができます。その事故が勤務中であれば、さらに労災も利用できるでしょう。しかし、労災が適用になる事故とはどのようなものなのでしょうか。

こちらでは、労災保険の概要や、他の保険制度と併用して使うことができるかについて解説します。

交通事故に遭遇した場合の治療費はどう賄う?利用できる補償制度

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自動車事故に遭った場合には、ケガを病院で治療したり、車を修理するなどで様々な費用がかかります。被害者側は、このような費用は賠償金として、加害者側に請求することができます。賠償金の内容は、物的損害・積極損害・消極損害・精神的損害の4つです。

物的損害には、車の修理費用や買い替え費用、代車費用などが含まれます。車に積み荷があった場合には、その荷物の弁償費用も物的損害です。積極損害というのは、人身事故で被害者側が負わなければならない費用です。「積極的に支払う必要がある」という意味で積極損害と言われています。

具体的には病院での治療費や入院費用、介護費用、家のリフォーム費用や装具の費用、葬祭費用などがあります。そして消極侵害は、事故に遭ったために得られなくなった費用のことで、休業損害や後遺障害逸失利益、死亡逸失利益のことです。

精神的損害というのは慰謝料のことです。入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。このように、賠償金には様々な内容が含まれていますから、事故の状況によってはその金額は非常に多額になります。加害者が賄いきれないケースがほとんどですが、その金額を代わりに被害者が負うとすれば、あまりにも理不尽でしょう。

そのような時に費用の補償をしてくれる制度があります。それは、自賠責保険・任意加入保険・労災の3つです。


自賠責保険とはどのようなもの?

自賠責保険は国土交通省が管轄している保険制度です。保険料などは法律で定められています。車を運転する人に対して加入が義務づけられており、加入していない車は車検に通ることができません。さらに、未加入のままの車を運転すると刑事罰が科されます。

このような厳しい制度であることには理由があり、それは自賠責保険の目的が、交通事故被害者を救済することにあるからです。自賠責保険による補償金額の上限は、120万円です。

任意加入保険とは?

任意加入保険とはその名の通り、加入が義務づけられていない保険のことです。民間の保険会社が扱っている保険商品で、加入義務がない以上、入っていない人もいます。加入条件や保険料、事故に遭った時の補償の内容などは、加入した保険の契約によります。

労災はどのような制度?

労災は労働者の保護のために国が定めた制度です。厚生労働省が管轄し、「労働者災害補償保険法」という法律に基づいて運用されています。労働者が事業所の業務を行うにあたって何らかの被害を受けた場合には、その被害の補償を労災保険から受け取ることができます。

労災に加入手続きをするのは事業所の事業主で、保険料も事業者が負担することになっています。労働者が労災の適用を受けるために手続きをしたり、保険料を支払う必要はありません。

自賠責と任意保険との請求関係

前述したように、交通事故被害に遭ってしまった時には、3つの制度を利用して補償をしてもらうことが可能です。しかし、複数の制度を同時に利用することはできるのでしょうか。それぞれの制度の関係について解説します。

まずは、自賠責保険と任意保険との関係です。この両者はどちらも利用することが可能です。しかし、賠償金を二重に受け取ることができるわけではなく、自賠責保険で賄うことのできない部分を、任意保険で賄うことが原則です。

そして、賠償金の請求時には被害者が自ら書類などを準備して、まずは自賠責に請求手続きを行い、それで足りなければ次は任意保険に請求する形になります。そのため、手続きにおける被害者の手間は大きくなりがちです。

また、賠償金を受け取るまでの治療費などは、被害者が立て替えることになりますので、金額面でも被害者の負担は大きいでしょう。そのような時には、任意保険会社から「一括払い」をしてもらえることがあります。一括払いというのは、任意保険会社がサービスの1つとして行っている対応です。

自賠責で賄う部分についても保険会社が立て替えて、治療費などを病院に支払います。被害者は請求手続きで煩わされることがありません。しかし、自賠責の上限金額を超えるようになると、任意保険会社から治療費支払いの打ち切りを伝えられるケースもあります。

このような場合、ケガがまだ完治していなければ、被害者は治療を止めずに自費で治療を継続した方が良いでしょう。治療費の支払いが厳しかったとしても、健康保険を利用して費用を抑えることはできます。また、自費に切り替えても、後から保険会社と交渉してその分の金額を受け取ることは可能です。

労災と自賠責保険との関係は?

労災保険と自賠責保険との関係はどうかと言うと、2つを併用して利用することはできません。管轄している省が違うとはいえ、どちらも国がお金を出す制度ですから、二重にお金を受け取ることはできないのです。しかし、自賠責保険での補償上限120万円を超えた場合、残りの金額については、労災保険で補償してもらうことは可能です。

また逆に、労災で賄えなかった部分を自賠責保険で受け取ることもできます。

労災が認定されるケース

労災と認定されるケースにはどのようなものがあるのでしょうか。前提として、被害者が「労働者」であることが必要です。労働者に該当するかどうかは以下の2点で判断されます。1つ目は、「他人の指揮監督の下で労働していること」です。

事業主は労働者にはあたりません。また弁護士も、労働者にあたらないと判断されることが多いです。弁護士は個々人の専門知識に基づいて行動するものとされているため、例え会社に所属していたとしても指揮監督関係が弱いからです。

そして、労働者に該当する2つ目の条件は、「労働の対価として賃金を受け取っていること」です。これらの条件に被害者が該当した時には、次に災害の発生状況を見て、労災にあたるかどうかが判断されます。該当する状況は「業務災害」と「通勤災害」の2つです。

業務災害は、労働者が使用者の支配下にある時に、業務に起因して発生した病気やケガです。通勤災害は、勤務先に通勤している際に発生した病気やケガです。ただし通勤災害の場合、自宅から勤務先までは合理的な経路と方法で移動しなければならないとされています。

つまり、寄り道した先で事故に遭った場合には労災に該当しないことがあります。

労災と自賠責はどちらを利用すべきか

労災と自賠責のどちらも使える場合には、優先すべきなのはどちらでしょうか。この点、厚生労働省で出した通達に、「自賠責保険を優先的に利用すべき」というものがあります。この通達に罰則があるわけではなく、実際にはどちらを優先するかは労働者の自由です。

ただし、労災を先に利用した方が、労働者にとってメリットが大きくなると思われる事例もあります。その1つが、被害者の事故における過失割合が大きい場合です。被害者にも過失がある場合に自賠責を利用すると、過失割合に応じて賠償金が減額されることになります。

しかし労災には、過失割合による補償金額の減額はありません。また、後遺障害等級が認定されるかどうかが曖昧なケースでも、労災を先に利用した方が良いでしょう。

なぜならば、自賠責が書類のみによる等級審査であるのに比べ、労災では顧問医師との面談なども行って審査します。よりしっかりとした審査のため、労働者も結果に納得が行きやすいからです。

しかし、労災と自賠責のどちらを優先的に利用すると良いかというのは、やはり個々の状況によります。判断に迷った場合には、労災に詳しい弁護士などへの相談も検討してみましょう。